愛妾を抱く冷徹皇太子に嫁ぎましたが、逆転して唯一の妃になりました
そして甘いひとときの後、彼の熱が深く押し入ってきた。

「うっ……」

鋭い痛みに思わず声が漏れる。

身体が引き裂かれるような感覚に震えながら、私は必死に耐え、ラファエル皇太子の動きを待った。

「痛みは治まったか。」

耳元にかすかに落ちる低い声。

その響きは冷徹な仮面のままなのに、不思議と優しさが混じっていた。

私は小さくうなずく。

それだけで、彼はほんの少しだけ速度を緩めてくれる。

やがて、再びゆっくりとした動きが始まった。

「……ああ……」

彼が腰を動かすたびに、痛みは快感へと姿を変え、波のように私を呑み込んでいく。

初めて知る熱に戸惑いながらも、身体は素直に反応してしまう。

「……あっ、ラファエル……」

思わず彼の名を呼んだ。

すると、冷ややかなはずの彼の瞳がかすかに揺らぎ、囁くように言葉が落ちる。

「イリス……綺麗だ。」

そのひとことが胸を強く満たした。

義務で始まった夜なのに、私はたしかに、彼にとっての妻なのだと思いたくなった。
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