反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
 迎えた球技大会。
  本当に無理。絶対に無理。
 緊張で足が震えて、ボールを追いかけるどころじゃなかった。

「小春!」

 コートの端から声が飛ぶ。振り返ると、夏樹が真剣な表情でこちらを見ていた。
 彼は手首から外した青いリストバンドを、勢いよく投げてよこす。

「それ、貸してやる。終わったら絶対返せよ」

 思わず両手で受け止め、ぎゅっと握りしめる。

 グラウンドに並ぶクラスのメンバーたち。笛の合図とともに、女子のサッカー試合が始まった。

「小春、そっち!」
「わ、わわっ!」

 ボールが転がってくるたびに、必死で追いかける小春。だけど足はもつれるし、蹴ったと思えば空振りばかり。

 転びそうになって「きゃっ」と声を上げると、相手チームの子に笑われて、思わず顔が熱くなる。

(うぅ……やっぱり無理だよ〜!)

 ふとリストバンドが視界に入り、それをぎゅっと片手で握りしめるとら不思議と、足の震えが少しおさまった。
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