反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
 思い切ってボールを蹴った瞬間、足に力が乗り、シュートがゴールに吸い込まれる。

「やった……!」
 小春は思わず両手を握りしめて喜ぶ。

 振り返ると、夏樹が笑っていた。
 その笑顔は、昔と同じ――幼い頃、二人で笑い合ったあの無邪気な笑顔。

「……すごいじゃん」
 声は少しぶっきらぼうだけど、その目は真剣で、温かくて。

 胸がドキリと鳴った。
 緊張で震えていた足も、今は軽く、風に吹かれるように感じられた。

 リストバンドはまだ手の中で少しあたたかく、夏樹の存在を確かに伝えてくれる。
 小春は自然と笑顔になり、次のプレーへと向かう足取りも軽かった。
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