反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
「フロス様〜!」
「かっこいい〜!」
その大きな声援は全て夏樹に向けられたものだった。

「がんばれー!!」
 みんなの応援に負けないくらい、誰よりも夏樹を応援したくて、大きな声を出した。
 私の応援なんて、必要じゃないかもしれないけれど。
 それでもいい。少しでもいいから、届いて欲しい。

 そして、最後のシュート。
 ボールが放たれ、リングに吸い込まれる瞬間、体育館は大歓声に包まれた。

 振り返った夏樹の笑顔――汗に濡れた髪の隙間から覗く瞳、少しだけ口角を上げたその表情――
 昔と同じ、幼い頃、優しくて王子様みたいだったあの夏樹の笑顔だった。

 そして、夏樹の視線が小春に向く。
 一瞬だけ、時間が止まったように、二人の目が合った。
 夏樹の瞳には、勝利の誇らしさと、どこか照れた温かさが混ざっていた。

 小春は自然と両手を握りしめ、胸の奥が熱くなるのを感じた。

 「やっぱり……すごいな、夏樹」
 小春の心の中で、そっとつぶやいたその声は、体育館の歓声にも負けないほど確かだった。

 夏樹は小さく口元を緩め、手をひらりと振った。
「…見ててくれたんだな」
 その声は低く、ぶっきらぼうだけど、どこか優しくて――小春の胸にじんわりと届いた。

 小春は思わず笑みを返し、また大きく手を振る。
 体育館のざわめきの中、夏樹が少しだけ小春の方に歩み寄る。
 自然な距離で立ち止まり、目線を合わせたまま、ほんの一瞬だけ笑う。
 小春の心は一気に跳ね上がり、顔が熱くなる。

 互いに言葉を交わさなくても、ただこの瞬間に存在しているだけで、二人の距離はぐっと縮まったように感じられた。
 青春の熱と胸の高鳴りが、静かに、でも確実に重なり合った瞬間だった。
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