【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 図書館の地下書庫なんて、滅多に人はやってこない。ここを利用するのは、王城で働く文官や魔法師たちが主である。特にリネットが閲覧している地区の伝承の資料の場所には、リネットしかいない。とりあえずタイトルにヤゴル地区の名前が入っている資料は片っ端から手に取った。
 それを持ってテーブル席へと向かい、内容の確認をしていたのが昼前だ。その作業中にラウルから昼食に誘われたため、テーブルの上には先ほどの資料が開かれたままになっていた。
 とにかく、何がなんでもあの呪いを解いてやる。
 そんな気持ちで、資料のページをめくっていく。
 だが、それも三十分も過ぎれば、猛烈な眠気に襲われた。これが睡魔というやつだろう。昼食をとった後に静かな空間に一人きり。資料がつまらないわけではないのに、なぜか襲いかかってきた眠気。これに抗う術はなく、むしろラウルの言う健康で文化的な最低限度の生活のために必要なものに違いない。
 少しだけ、と己に言い聞かせ、リネットは目を閉じた。
 どれくらいそうしていたかはわからない。気配を感じ、はっと目を開ける。
「おはよう、リネット」
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