【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 決まりきまった挨拶を交わして図書館を出るものの、針が刺さったような胸の痛みが抜けない。
 そのまま回廊を進み、魔法院の建物へと入る。その三階がリネットの所属する魔法史の研究室だ。ちなみに、リネットはここの四階の空き部屋で寝泊まりをしていた。
 案の定、研究室には誰もいなかった。いつもであれば、この誰もいない室内で一人居残りして、眠くなるまで研究に没頭するのだが。
 リネットは肩越しにチラリと振り返り、ラウルを見上げる。
「なんだ?」
「……いえ。今日は、帰ります」
「今日だけでなくこれからも、だ。特別な理由がない限りは、決められた時間に帰る。わかったな?」
 有無を言わさぬその口調に、リネットも「はい」と答える。
「団長さんのウザさが、今日一日で嫌というほどわかりましたので……これからはそれなりに対応いたします。だけど、治療を必要としている人がいるときは別ですけど」
「そうだな。その辺は臨機応変に対応すべきだ。だが、いくらウザいと言われようが、君みたいな人間は目を光らせておかないと危険だ。不規則な生活で身体を壊したり……最悪の結果になったりしたらたまったもんじゃないからな……」
 どこかラウルの顔が陰って見えた。
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