【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 街灯でぼんやりと浮かび上がる二人の影は、恋人というにはまだどこかよそよそしい。
 遠くからは人々の上機嫌な笑い声が聞こえてきた。酔っ払いだろう。
 リネットはあからさまに顔をしかめる。酔っ払いは嫌いだ。
 アルヴィスは嫌なことがあるとすぐにお酒を飲み、そしてリネットを呼びつけた。五人の側妃の中で最年少だったから、何かと八つ当たりの標的とされることも多かった。
 苦々しい思い出に、身体がぶるっと震える。すると、ラウルが突然立ち止まって繋いでいた手を離したかと思うと、リネットの身体をあたたかな上着で包んだ。
「団長さん?」
「風が出てきたみたいだからな。寒いんじゃないのか?」
 過去を思い出して震えただけだというのに、リネットが冷たい夜風で震えたと勘違いしたらしい。昼間はぽかぽかとあたたかな陽気だが、朝晩はぐっと冷え込む。だがぬくもり残る上着は心地よく、リネットはそれをしっかりと握りしめる。
「ありがとうございます」
「君に風邪をひかれたら困る。それに、キスをすると風邪がうつると聞いたこともあるからな。だから君が風邪をひけば、俺も風邪をひく」
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