【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 なんとも言えぬ感情が浮かんできたが、好意は素直に受け取っておく。
 お湯に身体を沈めて、リネットはほぅと息を吐いた。
(そういえば……不自由なく暮らしてほしいって、言っていたっけ……)
 朝からラウルはそんなことを口にしていたはず。呪いの緩和のためにリネットを巻き込んだことに罪悪感があるのだろう。だから何かとリネットを気にかけているに違いない。
(ウザいけど……)
 朝昼晩と、見事にラウルに引っ張り回された。今までの平穏な生活に突如と訪れた、嵐のような存在。
 でも、ウザいウザいとは言いつつ、リネットはそのウザさを楽しんでいた。いや、喜びなのかもしれない。
 スサ小国を離れて五年。今では成人を迎え、大人の仲間入りをしたが、やはりあの年で親や家族と引き離された寂しさが、心のどこかに巣くっていた。それにアルヴィスはリネットを妃として扱っていなかった。ただの都合のいい駒。忠実な僕のようなもの。
 だからラウルが帽子を送ってくれたり、何かと気にかけてくれるのは嬉しい。
 だけど、今までと同じぐうたらとした生活を望みたいという気持ちもある。できるだけ他人と関係をもたない暮らし。
 そしてこうやって彼の行動によって心掻き乱されるのが悔しい。
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