【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 その魔法具を使い、属国を恐怖で従えさせてきた。しかしその魔法具の威力が落ちている。このままでは、魔法具が使えなくなるのではという不安も、アルヴィスの心に迫っていた。
 世継ぎがいない。魔法具の力も衰えている。
 アルヴィスが眠れなく理由には十分なものだ。意外と小心者だったようだと、アルヴィスは自嘲の笑みを浮かべる。
「えぇ。そろそろ陛下もリネット王女を恋しがると思い、スサ小国には連絡しておきました」
「ほほぅ?」
 伊達にファミルは、アルヴィスが生まれる前からの付き合いではない。母の胎内にいたときから、見守ってきた男だ。
「ただ……もうリネット王女は娘ではないと。だからどこにいるかわからないと、そのようなことを申しておりました」
「なんだと?」
 ドン、とアルヴィスはテーブルを叩く。その衝撃でグラスや茶器が揺れ、ガシャンと激しく音を立てた。
「リネットは、スサに戻ったのではないのか?」
 約一年前、ほぼ寝たきりになっていたリネットを、アルヴィスは追い出した。あのときのリネットは、とにかく口うるさかった。身体を壊し、夜伽もできなかった。挙げ句魔法具も作れない。ただ寝ているだけのリネット。それでもか細い声で「むやみに魔法具を使わないでください」と、今にも折れそうな身体で訴えきた。その声が、なぜか今も耳に残る。
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