【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私

2.

 リネットは事務所内の資料室に戻り、調査した内容を手早くまとめる。
(荒らされた場所……魔法を使われた形跡はなかった……)
 つまり荒らした人物は魔法を使えない者。そちらの人間のほうが圧倒的ではあるが、ここを大きく分類したことで、今後の調査方針が決まるのだ。
 リネットは夢中になって調べ、考え、遺跡荒らしの犯人の意図を探る。読んでは書いて、書いては考え、そしてまた読み込む。
「……ト……ネット……おい、リネット」
 自分の名を呼ぶ声が聞こえ、リネットははっとして顔を上げた。
「あ、ラウルさん……どうかしました?」
「どうかしました、ではない。夕食の時間になってもこないから迎えにきた」
「あっ」
 ヤゴル遺跡への派遣について、ラウルはリネットに三つの約束をしていた。
 それは、食事は三食きっちり食べること。夜寝て、朝起きること。そして、知らない人の誘いにはのらないこと。
 この三つのどれかを破り、リネットの命が危険に晒されるようなことになってはならないからだ。特に三つ目の知らない人の誘いにのらないというのは、誰が遺跡を荒らした犯人かもわからないからこそ、すぐに人を信用してはならないという意味がある。
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