【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 反論できないリネットは、黙ってパンをちぎり、それを口に放り込んだ。少しでも口の中に残った臭みを消したい。
 食堂の食事とは違うが、ラウルと出会う前のリネットの食事はこんなもんだった。いや、これよりも酷かったかもしれないが、その質素な食事の中に干し肉は入っていない。理由はもちろん、苦手な食材だから。
 食事を終えると、見張りを残して、各自はテントへと戻っていく。これがラウルの言う、休めるときに休む。
 もちろんリネットはラウルと同じテントである。他の騎士らは何も言わない。暗黙の了解というもの。
「同行した魔法師が私でなくても、ラウルさんは魔法師と同じテントなんですか? その人の護衛を兼ねて」
「どうだろうな。そのときによる」
「エドガー先輩でも? あ、他の女性魔法師とかでも?」
 リネットの質問にラウルは答えず、話題を変えた。
「今日は疲れただろう? 早く寝なさい」
 その言い方はまるで母親のようだ。
「疲れましたけど……。でも、ヤゴル地区のいろんな資料を見て、ちょっと興奮しているのもあります。それに、ラウルさんの呪い。あれの解呪方法も一緒に調べたいですし……」
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