【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
「昔の鏡とかって言われたって、わっかんねぇしな。間違えて盗んだときには、荷物になるから途中で放り投げたけど」
 誰もいないと思い込んでいる二人組は、無駄話が多い。だが、そのほうがこちらの存在に気づかれなくてすむ。
「ま、今日は指輪だしな。ちっこいし。俺、一回、実物見てるしよ」
 やはり犯人は、発掘調査に携わっていた人間だ。
「リネット」
 相手との距離を測っているのはラウルだ。彼がトンと一回、リネットの肩を叩いた。しばらくして二回。
「見つかんねぇなぁ。本当にここにあるのか?」
「いつもなら上に置きっぱなし。上にないのを確認してきたしな。それにあいつらだって、盗難防止のために鍵のかかるこっちに移動させるって言ってたじゃねぇかよ」
「ま、この建物だって鍵はかかっていたが。俺たちにかかれば、鍵なんてあってもないものだな」
 トントントンと三回、肩を叩かれたリネットは、両方の手のひらを床に押しつけた。
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