【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
「結婚を考えている女性がいるんじゃないのか? ものすご~く噂になっている」
「義父……伯爵には伝えてあるが……」
「そこから陛下の耳に入ったんだよ。あの人が浮かれて、言ったらしい。まぁ、君たちの仲のよさは……誰もが認めているが、やはり結婚となればまた別の話だろう?」
 我が子のようにラウルを育ててくれた義父だ。呪いが解けたらすぐにリネットに結婚を申し込めるようにと、義父に根回ししたのが間違いだったのかもしれない。
「俺のことなんて、放っておいてくれればいいのに……」
「そうもいかないんだろう? 陛下は陛下なりに君のことを気にかけている」
 さすがに人の目がある場所を、イアンに引きずられて歩くのは嫌だったので、渋々と彼の後ろをついていくことにした。
 ラウルが連れていかれた先は、王城内の応接室だ。謁見室とは異なり、国王が近しい者と話をするときに使う部屋でもある。
 豪奢なシャンデリアが天井からぶら下がり、天井には幾何学的な模様が描かれている。ラウルがもっとも苦手とする内装だ。壁紙にも金銀糸で蔦のような模様が描かれていて、落ち着かない。
 しかも頼みの綱のイアンは、ラウルを部屋に連れてきただけで役目を終えたとでも言うように、そそくさと部屋を出ていった。
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