【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
「だけどね、リネット。この国の魔法師になるってことは、ここの国民になるってことなんだ。だから、誰かの養子に入ってもらうことを考えているんだけど……それは、問題ないのかい?」
 新しい家族ができる。だが、それはスサ小国に残してきた家族との縁を断つことになるかもしれない。
 ブリタが慎重に確認してきたのは、そのためだろう。
「はい、先ほども言いましたように、私はもうスサには帰れません。帰ったところで両親にも迷惑をかけてしまいますし……。それにまた、皇帝の気が変わって私を連れ戻すかもしれません。それまでに結婚できていればいいですけど、皇帝のお手付きを欲しいと思う人は、あのスサにはいないでしょう」
 リネットの話を聞いたブリタは「そうかもね」と相槌を打った。
「わかったよ。あんたんとこを養子にしてくれそうな人を、適当に見繕っておくから」
「これが権力のなせる業なんだよ」
 エドガーが茶々を入れた。そんな彼を軽く睨みつけてからブリタは言葉を続ける。
「それまであんたはここの患者だ。体力が回復するまで、ゆっくり休みなさい」
 ブリタの言葉が嬉しくて、鼻の奥がツンと痛む。温かいスープの香りと彼女の母のような優しさに、胸が熱くなる。
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