【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私

2.

 最近、ラウルが忙しそうに見えるのは、キサレータ帝国からアルヴィスが来るからだ。ヤゴル地区の盗難事件に帝国が関わっていたため、謝罪のためにわざわざセーナス王国にやってくる。だが、関係者は誰もが裏があると感じているらしい。
 それゆえ、警備に気が抜けない。
 第七騎士団は、王都内の警備に当たるため、団長を務めるラウルが忙しくなるのは自然な流れだろう。それでも自室に戻ってくるのが、以前よりもぐっと遅くなるような日が続けば、リネットだって心配になる。
 しかし毎日の「おはようのキス」はかかせない。寝るときにはいなかったラウルが、朝、起きたときには隣で寝ている。そしてキスをして散歩するといういつもの流れは変わらない。疲れているなら散歩などせずに寝てればいいのにと思うが、ラウルにとって散歩は欠かせないらしい。それから一緒に朝食をとり、彼はすぐに部屋を出ていく。
 以前は三食ともにラウルと一緒に食べていたのに、今は朝の一食のみ。となれば、リネットの食事はまたおろそかになっていく。
「なんか、リネット。不細工な顔をしてる」
 そのまま魔法院の研究室に足を運べば、エドガーと嫌でも顔を合わせる。その彼の第一声がそれだった。
「エドガー。不細工ではなく、不機嫌な顔っていうのよ」
 女性魔法師がフォローに入るが、リネットとしてはそのような顔をしていたつもりはない。
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