【完結】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私
 となれば、頼るのは魔法師長しかいない。
 師長室へ向かい、事情を説明すると、彼女はリネットの部屋の鍵を開けてくれると言った。
 ラウルがうら若き乙女が寝ている部屋に侵入するのは、いささか良心も咎めたが、背に腹はかえられぬ。
 魔法師長権限によってリネットの部屋の鍵は開けられ、師長の許可のもと、ラウルは彼女の部屋へと入った。
 しかしリネットはラウルの侵入に気づくはずもなく、気持ちよさそうに眠っている。
(か、かわいい……)
 昨日よりも幼く見えるのは、寝顔だからだろうか。ぽってりとした唇、ふっくらとした頬。閉じた瞼からはみ出ているまつげは長い。
 ラウルの心臓がドクンと音を立てる。
『おい、リネット。起きてくれ。キスの時間だ』
『んっ……?』
 瞼がぴくぴくと震え、ぼんやりとした焦げ茶の目が見えた。
 リネットを見ていると、庇護欲がかきたてられる。それはニャアニャア鳴いている子猫と同じように、守ってあげるべき存在だと、本能が訴えるのだ。
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