幼なじみの、隠しごと。
私のファンだと名乗った男の人は、私をキラキラとした目で見る。

わ、私の……?

少し嬉しくなりながら、「ありがとうございますっ」とお礼を言うと、男の人は言った。


「あのっ、それで、握手とサイン、あと写真、いいですか?」

「えっと……それは、できなくて……握手くらいなら、できるんですけど……」


そう言って断ると、男の人はショックを受けたような顔をする。

も、申し訳ないな……でも、できないから……

そう考えていると、男の人は言う。


「……でも俺、本当にファンなんです……! お願いします、一回でいいので……!」

「え、えぇ……無理ですよっ」

「本当にお願いします!」


そ、そんなに言われたって……できない物はできないんですっ。

おろおろと困っていると、男の人は思いついたように言う。


「……わかった、信じてないんですね? 今は持ってませんが、家にグッズがあります……! 見せるので、サインと写真もお願いします!」

「あっ、ちょっと……! や、やめてください、引っ張らないで……!」


私がそう言っても男の人はやめないで、私の腕を引っ張ってくる。

い、痛い……っ!

力が強くて……こ、怖いよっ。

ぎゅっと目を瞑って、できるだけ動かないようにする。

でも、力が強くて、逆に足を痛めてしまった。

そんな私の耳に、何やら焦ったような叶の声が聞こえてきた。
< 43 / 65 >

この作品をシェア

pagetop