天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
現れたのは、人間でいえば2メートルをゆうに超えそうな美しい女のスズメバチ。
筋肉の鎧をまとったような屈強な身体、
黒地に黄のラインの入った外套。
黒い翅を揺らしながらずんずん近づいてくる。
「ひぃぃ…っ!」
「へえ〜!聞いてたとおり小さい!かわいい!」
「かっ、かわ……?」
「申し遅れました、私はルーラ!
今日から王妃付きの侍女ですっ!」
ルーラは巨体で飛び跳ねた。
「いやあ、ほんっと小さくて可愛らしい!これが花の国の姫か〜!」
にかっと笑うその顔は、戦場でも敵がふるえ上がりそうな強面。
けれど、太陽のようにまぶしい笑みだった。
「よ、よろしくお願いします……」
「あはは!礼儀正しいのも可愛い〜!」
ルーラはぐいっとカミリアの手を取り、
踊るように部屋へ引き出す。
「さあ、宮殿を案内しますよ! 広いから迷っちゃいますよ!」
「あ、あの……!王は、どこへ?」
恐る恐る伺うと、ルーラはあっけらかんと答える。