天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
「……あれは?」
「あれは肉団子!捕らえた蝶の幼虫を
刻んで、栄養団子にしてるんです。栄養価最強ですよっ!」
(ひ、ひいいい……!)
カミリアは思わず一歩引いてしまった。
けれど、養育係の成虫は、団子をそれは美味そうにほおばる幼子を優しく見つめていた。
「あぶ………」
うれしそうに笑った幼子が、額から
なにやら琥珀色のシャボン玉のようなものを出した。
そこに、成虫がそっとキスをして――
「……え、液を、吸っている?」
「そう。幼虫が分泌する甘露液をね。
『栄養交換』と呼ばれるスズメバチの伝統です!成虫の疲労回復や免疫強化に効くんですよっ」
カミリアは、口元を押さえながらも、
目を逸らさなかった。
(ミツバチと違って他の虫を食べるのは……生態の違い。
文化の違い、だけど……)
「……とても、大切に育てているんですね。子どもたちへの愛があふれています」
「もちろんです! 我らが未来ですから!」
ルーラは誇らしげに胸を張った。
その胸板が分厚くて、カミリアは少し笑ってしまいそうになる。
回廊に出てから、カミリアはぽつりと呟く。
「あ、あの……あなたは嫌ではないんですか?
こ、こんなひ弱な王妃の世話をするなんて」
思わず漏れた言葉。
言ってしまってから、しまった、と
唇を噛む。
(いけないわ。王妃たるものがこんな弱さを見せては)
しかしルーラはきょとんとしたあと、