天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
◇ ◇ ◇
夜が訪れた、ヴェノミール王宮の大広間。
毒花の香が満ちる石の空間に、火鉢の果実酒がぱちぱちと音を立てる。
闇に赤く浮かぶ石柱。
壁に吊された巨大な翅の飾りが風に揺れ、まるで影が踊っているようだった。
今宵は、ミツバチの王女・カミリアを迎える“祝宴”の夜――
スズメバチらしい、褐色の肌と逞しい体躯。
男蜂も女蜂も鎧を脱ぎ捨て、むき出しの毒と熱気を纏いながら集っていた。
「……あれがミツバチの姫か」
「細いな。風に吹かれたら飛ばされそうだ」
「まさかあんな小さいのが王妃になるとは……」
耳打ちするような声がいくつか、周囲からこぼれる。
明確な敵意ではないが……どこか探るような、下に見る視線。
カミリアは翅をすくめた。
けれど、すぐにルーラがそっと支えるように囁く。