天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
最初に口にしたのは、王の側近・グリオン。
無骨な巨体に似合わぬ繊細な仕草で、
彼は花粉団子を見つめた。
「口の中でとろける……香りが鼻に抜けて、身体が……熱い……!」
屈強な体躯で花の香りにうっとりする
その横顔に、周囲の兵士たちが目をみはる。
「ええ、あのグリオンが!?」
「あの石みたいなやつが、食レポしちゃうくらい美味いの!?」
ざわめきのなか、次々に手が伸びる。
「カッ、なんだこれ、口の中でとろけて……」
「身体があつく……んん……ふふ、はははっ! ハァーッ!!」
「翅がうずく、もっと踊りたくなるぞ!」
つられて食べたスズメバチたちが、
次々と目を見開く。
けたたましいほど剣と翅が鳴り、
指先から毒がほとばしる。
瞬く間に宴は狂騒のような盛り上がりを見せた。