天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
毒々しい黒と金の衣を纏ったアザレオが、
じっとこちらを見つめていた。
その瞳にかすかな笑みが宿っているのを、カミリアは感じ取った。
「王妃よ」
「は、はい」
「今宵は、楽しめているか?」
「……はい。ヴェノミールの方々はとても勇ましく、美しくて……
そして、力強いと思いました」
「ふむ。そうだろう」
アザレオは満足げに杯を掲げた。
「フロライアの財産たるこの花粉団子、悪くない。
高揚感が全身を駆けめぐる。
……毒に劣らぬ、蜜の力だ」
どよめく兵たち。
そして、あふれる笑いと拍手。
「王妃殿下に、乾杯を――!!」
「乾杯ッ!!」
毒と蜜が混じる宴。
その香りのなか、カミリアの胸にほんの少し"居場所"が芽生えた気がした。
(この国は、噂で聞いたよりもずっと……
熱くて、義理堅くて、まっすぐなのかも)
アザレオの視線が穏やかに降り注ぐ。
視線の熱が、蜜よりも甘くしっとりと
心に染み渡っていった――