天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
◇ ◇ ◇
最高潮の盛り上がりを見せた、宴の夜。
寝室の燭台には、果実酒をたいた残り香がかすかに漂っている。
蜜と毒のにおいが、夢へと誘うようだった。
「ふふ……あれだけ騒いでた兵士たち、
もう泥のように眠ってるんじゃないかしら」
カミリアはひとり言のように呟いて――
すぐ後ろに羽音と気配を感じてぴしりと背を伸ばす。
「まだ起きてたのか」
「ぴぇっ……!」
「?? ミツバチは変わった驚き方をするのだな」
気づけば、アザレオが背後にいた。
夜の闇のような気配とともに現れ、
カミリアの翅にふわり触れる。
「宴、上出来だったな」