天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
「は、はい。あの、皆さん……少しだけ、
受け入れてくれたような、気がしました」
「間違いないな。ミツバチに懐疑的だった兵士もお前を見直した」
アザレオは少し楽しげに翅を鳴らして
続ける。
「いい意味で、予想を裏切られたと
いうやつだ。
スズメバチは気性は荒いがさっぱりしている。
『こいつは力がある』と思えば、たとえひ弱なミツバチであれ価値を認める」
アザレオはベッドの隣に腰を下ろし、
手にしていた果実酒の杯をとんとチェストへ置いた。
「こっちの文化もフロライアとはだいぶ違う。驚いたろ」
「……え、ええ。幼子に、肉団子、とか……」
「はは、あれか。高タンパクだぞ」
「……でも、すごいなと思ったんです。
ちゃんと秩序があって、お互いに助け合ってて」
カミリアは、ふと自分の手のひらを見下ろす。
「この国で……私、やっていけるでしょうか」
「やってもらわないと困る。おまえは王妃だ」
きっぱりと言って、アザレオはベッドへと横になる。
一拍遅れて、カミリアも慌ててその隣へ。
しかし──
今夜も、彼は触れてこない。
ぴん、と沈黙が張り詰める。