天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
(また、何もない……?どうして……?)
横目でちらりと彼の顔を盗み見ると──
アザレオはいつものように感情の読めない顔で、天井を見つめていた。
「……あ、あの」
「なんだ」
「なぜ、私に触れないのですか……?」
思わず、蚊の鳴くような声で尋ねていた。
アザレオは軽く目を細める。
「お前がもう少し慣れてからのが……良い蜜が出そうだからな」
「・・・」
「蜜も毒も……じっくり漬けたほうが上手いし、酔えるだろう?」
「……(ちょっとよくわからないわ)」
「なんだ。文句あるか」
「いえ……あり……ません」