天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
(――なんだか、拍子抜けだわ)
強引に奪う真似はしない。
睨まれたら竦み上がる鋭い眼を持ちながら、思いがけぬ節度を持った王。
(……わからない蜂だわ)
でも、それが不思議と嫌じゃなかった。
ふいに、王は天井からカミリアへ目を向けた。
「……王妃になったからには、国のことも覚えてもらわないとな」
「はい。そうですね」
「明日、視察に行く。国境近くで気になる外敵の動きがあった。
……おまえもついてこい」
「私も、ですか?」
「そうだ。この国の周囲には、おまえたちを狙う奴らがまだたくさんいる」
「…っ!」
「まずは現場を見ろ。俺達でさえ手を焼いている現実を。
……弱いやつは、生き残れない」
それだけ言うと、アザレオは背を向けて目を閉じる。
その黒い翅をカミリアはそっと盗み見た。
(やっぱりちょっと怖いけど……
それだけじゃないと分かったのは大きな進歩だわ。
……ミツバチ族にとっても)
そう思いながら、そっと目を閉じた。