天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
敵や仲間たち
◇ ◇ ◇
朝焼けに染まる空を、鋭い翅音が切り裂いた。
先頭を黒と金の鎧をまとう王・アザレオを筆頭に――
そのすぐ後ろをカミリア、護衛のルーラ、
そして殿に側近のグリオン。
四つの影が風を裂き、国境地帯へ向かう。
「しっかりつかまっててくださいね、
カミリア様!風が強いですから!」
「は、はいっ!」
スズメバチほど高速で飛べないカミリアは、ルーラに手を引かれながら
必死に翅を動かしていた。
強まる気圧。風圧。
慣れない速さに、翅が震える。
(空を走ってるみたい……
ミツバチじゃ到底追いつけないわ)
前方、アザレオの背中は威風堂々としていた。
それを見失わぬように、カミリアは必死で風をかく。
「本日は国境視察です」
ルーラが横で声を張る。
「最近、敵性の虫が付近に現れているとか……」
「敵性?」