天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜

「はい。たとえば──オニヤンマなど。
奴らは素早い上に、我々より図体も大きい。とても危険な敵です」


ふいにアザレオが停止する。
ホバリングしながら国境を鋭く見つめている。

カミリアが前方に目を凝らすと、木立の中に黄色と黒の影がちらほら動いていた。


隣国、キイロスズメバチの王国――【アウリナス王国(黄色の国)】。
人間界で最も姿を見るスズメバチの種である。


「……あれが、キイロスズメバチ族です」


ルーラが耳打ちする。
アザレオたちオオスズメバチとは違い、
黄色ベースのスリムな鎧。
小刻みにせわしなく翅を唸らせている。

一人の兵士がちらりとカミリアを見る。
目を細め、わずかに眉をひそめた。




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