天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜



太陽が高く昇ってきた刻。
四人はなおも雑木林を切り裂いて飛び進んでいた。

少し騒がしくなってきたかと思えば――


ヘヴィメタルな絶叫が、一斉に林を揺るがした。



「好きだあああああ!!!」
「おれを見てくれえええ!!」
「ああ、愛しのセミリーナ……
どうかこの歌を聴いてくれえええ!!」


「……あわわっ、これは……」



木々のあらゆる枝から、耳をつんざくほどの声が重なり合う。

人間の耳には「ミーンミーン!」とか
「シャンシャンシャン!」としか聞こえないが、その旋律はメタルな合唱のよう。

何百というセミの男たちが木の上で、
命を賭した愛を叫び続けているのだ。




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