天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜


振り向けば、そこに佇むのは漆黒の鎧を脱ぎ捨てた男──
ヴェノミールの王、【アザレオ】。

禍々しいほど黒い(はね)
毒針のような威圧と色気。

そして――獲物を品定めするような琥珀色の目。


「先から翅がふるえているぞ」
「……ッ!」


(怖い……!だけど、背を向けるわけにはいかないわ)


カミリアはふるえる声で言葉を絞り出した。


「わ、わたくしは陛下のものにございます。
……お好きに、なさってくださいませ」


ファサ―――


吐息のような笑いとともに、アザレオの指先がべールを払う。

薄布が宙を舞い、ふわりと床へ落ちた。




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