天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜

「っ、し、失礼しました……!
そうですよね、場所が場所ですものっ……」
「……ふ、焦るな。嫌ではない。
むしろ……癒される」


アザレオはくすっと笑い、ベッドへ腰掛けたまま少し肩の力を抜いた。
翅が開き、蜜の香りがふわっと広がる。


カミリアはすうっと息を吸い――
再び、蜜を塗り始めた。


(鼓動が、変だわ……)


背中に指を這わせるたび、翅が小さくピクリと動く。
そのたびに彼女の心も、風に揺られる木々のようにざわめいた。


「カミリア」
「……は、はい」


振り返ったアザレオと視線がぶつかる。
暗がりの中、琥珀色の瞳がやけに熱を帯びていた。





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