天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
「……今日は、お前の機転に助けられた」
「あ、あれは本当に偶然で……!」
「だが、本当に助かった。
……これで、命を預けられるな」
すっと、アザレオの手がカミリアの手を取る。
塗っていた蜜が、彼女の指にとろりと
残っている。
「今はこの手で、俺を癒してくれた……」
「そ、それは、陛下が私を、命がけで
抱えて飛んでくださったから」
――触れた指先が、翅の根元に落ちる。
アザレオの眉がわずかに動き、深く息を吐いた。
「……もう少し、そばにいてくれ」
その声音が、ふだんよりわずかに低くて――
誘われるように、カミリアはベッドの縁に腰を下ろした。
「ま、まだ……終わってませんもの。
翅の、ここ……」
そう言って指を伸ばす。
翅のつけ根。
やわらかな筋肉が集まるその部分に、
蜜を塗る瞬間――
「ッ……」
アザレオの喉から、低い息がもれた。
「……ご、ごめんなさいっ、やっぱり痛――」
「……違う」