天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
アザレオが翅をふるわせながら振り返る。
ベッドの上で上体を起こし、カミリアの頬に手を添える。
「気持ちいいだけだ……触れられると、
おかしくなりそうだ」
「……おかしく?」
「今夜、お前が隣にいると……理性が保てないかもしれない」
琥珀の瞳が、真っ直ぐに彼女を射抜く。
「俺に触れられる覚悟がないなら……今夜は別の部屋で眠れ」
「…………」
心臓が、どくんと跳ねた。
それでも動かなかった――
否、動けなかった。
アザレオの掌に包まれた頬が熱く、
息も、思考も、蜜の香りのように蕩けていく――
「……私は、陛下のお傍にいたいです」
静かにそう告げたその言葉に、
アザレオの瞳がふっと細められる。
「……カミリア」
もう一度名を呼ばれたその瞬間、
唇が重なる覚悟を決めた――
………が。