天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜

「寝室にいないから……なにかあったのかと思ったぞ」
「ごめんなさい。どうしても今夜中に、
花粉団子に蜜を仕込んでおきたくて」


そう言って、カミリアは誇らしげに
蜜壺を見せる。


「明日には発酵が進んでしまいますから……
また、みんなが笑ってくれますよ。
酔っぱらったように」


その無邪気な笑顔に、アザレオは言いかけた言葉を飲み込んだ。

ふと窓の向こうに目をやる。


「……あれは?」
「ホタルです。珍しいですね、この時期に。
きっと……最後の命です」


カミリアはそっと窓を開けた。
夜風が花の香りとともに流れこみ、
彼女のまわりだけが、ふわりとあたたかかった。


「……少しだけ、見に行きませんか?」


その目が、星のようにきらめいていた。




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