天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜

(なんとしても、私が王国を守らなければ……)


ヴェノミールからの迎えが来た日。
恐ろしい重低な翅音を鳴らすスズメバチの兵士を見上げ、カミリアは透明な翅を広げた。


噂に聞くヴェノミールの王は、
スズメバチの名に恥じぬ冷酷無比な暴君。


(王国が助かるなら、私は餌食になってもいい――)


カミリアは、泣きながら見送る一族へ
笑顔で手を振り、天敵の巣窟へと旅立った。



涙がひとすじ、頰を伝って落ちたのを隠して。




昨夜のような初夜が訪れることを、
この時カミリアは予想だにしなかった――






< 7 / 60 >

この作品をシェア

pagetop