天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
スズメバチの王宮
まどろみのなか、どこか遠くで翅音が聞こえていた。
規則正しく、風を裂くような重低音――
スズメバチの翅音が。
(――あ……もう、朝……?)
ゆっくりと瞼を開け、ぼんやりと隣を向くと――
「……あら?」
寝台の隣はすでに整えられていた。
昨夜、カミリアの隣で眠っていたはずの彼――アザレオの気配はどこにもない。
「し、しまったわ、私としたことが……!
ちゃんと朝起きてお見送りすべきだったのに……!」
背中で翅が、情けなくぷぅん……と鳴く。
「あぁあ……夕べはなんか微妙な初夜だったし、肝心の初夜明けに寝過ごしてしまうなんて…っ」
透明なその翅を広げておろおろとしていた、そのとき――
「カミリア様ぁっ!おはようございますっ!!」
扉がバーン!と勢いよく開いた。