MYSTIQUE
「俺が無愛想だからかな⋯⋯。じゃあ、怖がらせない為にも、自己紹介するよ。普段は、国立工大の四年。父親がシャヌーナプロの社長で、スターに相応しい逸材を見つけたら連れてくるように言われて、スカウトマンの真似事をしてる。ただ、なかなかそんな逸材なんて居ないし、声をかけたのは、これが初めてだったんだ。だから、スマートなやり方じゃなくてごめん」
 一郎は、目を伏せたまま、時折ちらちらと青年を見上げた。
 大手芸能プロダクションの社長の息子なので、当然裕福であり、おまけに、彼自身がモデルかと思うほど、顔もスタイルもいい。
「お待たせしました」
 ウェイトレスが、テーブルいっぱいに料理を並べる。
「とりあえず、冷めないうちに食べよう。腹減ってるだろ?」
 一郎は、本当に手をつけていいのか躊躇ったが、派手にお腹が鳴り、恥ずかしくて俯いた。
「ははっ。だから、遠慮するなって言ってるのに。ほら⋯⋯」
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