MYSTIQUE
 青年は、皿に料理を取り分けて、一郎に渡す。
「じゃあ⋯⋯いただきます」
 一口、食べた瞬間、
「美味しい⋯⋯!」
 普段があまりにも酷い食生活だっただけに、一郎は衝撃を受けた。
「きみ、面白いな。ファミレスでそこまで感動する子は初めてみたよ」
 青年は、一郎のことを、まるで可愛い弟のように思って笑った。
 普段は口数の多くない青年だが、一郎を怖がらせない為に、あれこれ話すと、一郎も少しずつ心を開いていった。
「ところで、16歳があんな場所で何してたんだ?」
 それを尋ねられると、一郎はまたしても口を噤んでしまう。
「学校は?」
「行ってません⋯⋯」
「ふぅん⋯⋯でも、ヤンキーとか家出少年って感じではないな」
「あの、聞いてもいいですか?」
 珍しく、一郎のほうから質問する。
「何なりと」
「芸能界って⋯⋯稼げるんですか?」
 なかなか、直球の質問だ。
「そりゃ、売れたらね」
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