竜王の歌姫
ギルバートの言葉に、喜色を滲ませるルーシー。
しかし目の前のギルバートは無表情のまま。

「上に立つ者に必要なのは、この国をより良くし、民を守ろうと思う心だ。
俺たちは、そのために権力を与えられている。
それを無闇矢鱈に振りかざすことは許されない」

ルーシーを見つめる瞳は、どこか冷ややかなものだった。

ギルバートに、普段のルーシーの言動を吹き込んだ輩でもいたのだろうか。
それでも尚、ルーシーはピンと来なかった。

だって歌姫は、いうなればこの国の救世主。
何よりも大切にされるべきでしょう?
何もかも許されるべきでしょう?

「歌姫だって同じ。
国のため、民をためを思い力を使う……そんな歌姫だからこそ、共に在りたいと望むんだ」

気に入らないことがあれば声を荒らげ
気に食わないやつがいたら虐げて。

少しくらい我儘に振舞ったからって、それの何が悪いというの?

「……それでも君は、自分が歌姫に相応しいと思うか?」

だからその問いに、ルーシーは平然と答える。

「だって私は、あなたの歌姫ですよ?」

相応しいも何も、歌姫たり得るのは、この私だけなのだから。
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