幼馴染の恋の行方
 暗く細い道を進み続けると、ちょっとした広場に人集(ひとだかり)りが出来ていた。ザワザワとしたその雰囲気は、何かしら良くない事があったと想像出来る。

「な、何かあったのか?」

 誠也が人集りの一人に聞くと、足をくじいた女子がいるとの事だった。

 友花里だった。


「友花里!」

「未来……溝で足を滑らせちゃったの。も、もう立てるから……」

 友花里は起き上がろうとしたが、「うっ」と右足を押さえた。

「悪い、未来……このルートに入ろうって言った俺が悪いんだ。すまん」

 勇人は僕に頭を下げた。


「とりあえず、俺が友花里をおんぶするよ。構わないか?」

 勇人が言うと、友花里はコクリと頭を下げた。

 勇人は友花里をおんぶしたまま、細い夜道を進む。懐中電灯を持っている生徒は、勇人の足下を照らし続ける。そして、広い道まで戻ってくると、勇人は友花里を下ろした。

「ふうー、一度休憩。ちょっと待っててくれ、友花里」

「ううん、ありがとう、もう大丈夫。道が広くなったから、肩だけ貸してくれたら。——未来も手伝ってくれる?」

 友花里は僕を見てそう言った。


 友花里の右側から勇人、左側からは僕が支え、宿舎までの道を戻り始める。

「そろそろ到着しないとヤバい時間だから、皆先に戻ってくれないか? 先生には俺たちが遅れてる理由を伝えてくれると助かる」

 勇人が言うと、他の生徒たちは先に宿舎へと戻っていった。


 街灯と満月が照らす夜道を、僕と友花里と勇人で歩いている。

 聞こえてくるのは、虫の鳴き声と、僕たちの足音だけだ。


「ごめんね、ホントに……面倒起こしちゃって……」

「何言ってんだよ。たまたま友花里が足をくじいただけって事だ。俺がその場所を歩いてたら、逆だったかもしれないし」

「そうだよ、気にしなくていい。後で先生に怒られるだろうから、それだけ今から覚悟しておかないとね」

 僕が言うと、2人はクスッと笑った。
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