僕の愛しい泥棒娘

それからは孤児院の親友でもある2歳下の
サリーヌを相手にすれ違いざまや、後ろに
立った時にペンダントや時計、ブレスレット
を気付かれずに掏る練習をしたのだ。

そしてその第一番目の相手がワイナリー公爵
家の夫人だったのだ。

孤児院を16歳になって出て行かなければなら
なくなった時ユミアは少し高級で貴族が出入
りするようなカフェで職を得た。

読み書きも計算も人よりできるユミアはその
上品な容貌もあって、孤児院出身であっても
雇ってもらえたのだろう。
　
給料もよかったので何とか一人で暮らす小さ
な部屋も見つけて独立することができた。

裕福そうな貴族から宝石や時計を掏って、
生活の足しにしたり自分の夢を実現する為の
資金にするべくお金を貯めた。

換金して思ったよりもお金が入った時には、
孤児院に寄付することを忘れなかった。

王都の孤児院と言っても運営は火の車で、
たまに気まぐれでも貴族が寄付をしてくれる
事があると、子供たちの食事が一品増えたり
する。

カフェで働き始めてユミアは、客の女性達の
話から下位や高位の貴族の内情を知るように
なった。

カフェの客は高位貴族の令嬢や侍女、王宮の
女官などが多く、友人相手に気を緩めて色々
な王宮のうわさ話や仕える貴族家の内情など
を楽しそうに話しているのだ。

そんな事から、不正をしていそうな貴族、
裏取引で潤っている貴族が浮かび上がって
くる。

ユミアはそんな貴族の屋敷に夜中に忍び込み
宝石や隠してある現金を盗むようになった。

器用なユミアは鍵を開けるのは1分も掛から
ない。そして2度目に入りやすい様に掃除道
具入れやキッチンなどの人の視線の死角にな
るような窓鍵を開けておくのだ。