僕の愛しい泥棒娘
公爵家の様に使わないものを置いてある部屋
があるのは分かり易くて大助かりだ。

その部屋の宝石をもう3回ほど侵入して盗っ
て来ているのだ。

ワイナリー家には縁がある。ワイナリー公爵
夫人のブレスレットをすれ違いざまに掏った
のが一番最初だった。

ドキドキしたのだが、手先が器用なユミアに
は案外簡単だった。

そもそも掏りを思いついたのは、まだ成人前
で孤児院にいる時、時々カフェの店員として
働く事があった。

そこで、貴族の屋敷で侍女をしているらしい
二人の女性の話を小耳にはさんだ事がきっか
けだった。

お屋敷の奥様はよく物をなくすらしく、ある
日その侍女がお供をして王都の人気の劇場に
行ったとき奥様がペンダントを落としたそう
だ。

それを拾って置いて持っていたそうなのだが
お友達と会話をされていて、声をかけるのも
憚られたので屋敷に帰ってからと思っている
と、帰って来て服を着替える時に

“あらまたペンダント落としちゃったわ“と
あっけらかんと言ったので侍女はペンダント
を渡すタイミングを逃してしまったらしく、
未だに持っているのだと言った。

そして、もう一人の侍女にどうしたらいいと
思うと聞いたのだ。

もう一人の侍女は、忘れているなら貰ってお
いたら?気が咎めるなら、もう少ししたら知
らん顔で宝石箱の底にでも返しておけばいい
んじゃないとあっけらかんとして話していた

そのときユリアはお金持ちの貴族様はお高い
宝石を失くしてもなんとも思っていないのだ
と気が付いた。

それなら一つくらい頂いても良いのではと
思ったのだ。
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