召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
「アゼリアさん、大丈夫ですか?」

 書架に手をつき、目を閉じたまま頭を下げている姿は、さながら疲れた人に見えたのだろう。ここ、本来の禁書の番人をしている、ラモーナ・フェルセに声をかけられた。

 ヘルガのように髪の長い女性が多い中、ラモーナは灰色の髪を短くし、さらに司書とは思えない白衣を羽織っていた。ラモーナ曰く「危険な書物が近くにあるのに、お洒落なんかできませんよ。私の仕事は不審者の撃退なんですから」とのこと。
 確かに、言われてみればそうだと思い、私もラモーナに倣ってエプロンをしていた。これは元いた世界でも、図書館で使用していたため抵抗はない。けれど白衣は……さすがに真似できなかった。

「大丈夫。久しぶりに本と向き合えた嬉しさを、噛み締めていただけだから」
「ふふふっ。それ、分かります。でもなんだか意外ですね」
「そう? 本が好きじゃなかったら、図書館に勤めたい、なんて思わないけど」
「確かに。なんだか、アゼリアさんっていうと、占いというか相談所のイメージが強くて。すみません」

 ラモーナの言い分も無理はない。だから、否定もせずに受け流したら、逆に申し訳なさが募った。
< 101 / 215 >

この作品をシェア

pagetop