召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
「構いませんが、お話でしたら向こうでしませんか?」
「向こう、ですか?」
私は青年の横を通り過ぎ、今し方、彼が来た方向に手を差し出した。それが腑に落ちなかったのか、青年は首を傾げる。
「利用者が立ち入ることができるのは、ここまでですから。私たちがここで話し込んでしまうと、他の利用者がここもいいのだと勘違いし兼ねません。その防止です。ご理解ください」
柔らかい口調を心掛けながら、ニコリと笑う。誰だって注意をされるのは嫌なもの。子どもとか大人とか、そんなものは関係ない。だから気分を害さないように、やんわりと言うのが鉄則だった。
けれど青年は不満そうな青い瞳を私に向ける。茶色い髪は懐かしさを感じるけれど、その目の色は彼を異世界人だと思わせた。
「聞きたいことが、探している本だった場合も含めてです。二度手間にはなりませんでしょう?」
仮に迷ったのだとしても、同じことだ。わざわざ私に声をかけたのだって、図書館の関係者だと分かっているからに違いない。そうでなかったら、同じ迷子かもしれない相手に、声をかけるような真似はしないだろう。
「向こう、ですか?」
私は青年の横を通り過ぎ、今し方、彼が来た方向に手を差し出した。それが腑に落ちなかったのか、青年は首を傾げる。
「利用者が立ち入ることができるのは、ここまでですから。私たちがここで話し込んでしまうと、他の利用者がここもいいのだと勘違いし兼ねません。その防止です。ご理解ください」
柔らかい口調を心掛けながら、ニコリと笑う。誰だって注意をされるのは嫌なもの。子どもとか大人とか、そんなものは関係ない。だから気分を害さないように、やんわりと言うのが鉄則だった。
けれど青年は不満そうな青い瞳を私に向ける。茶色い髪は懐かしさを感じるけれど、その目の色は彼を異世界人だと思わせた。
「聞きたいことが、探している本だった場合も含めてです。二度手間にはなりませんでしょう?」
仮に迷ったのだとしても、同じことだ。わざわざ私に声をかけたのだって、図書館の関係者だと分かっているからに違いない。そうでなかったら、同じ迷子かもしれない相手に、声をかけるような真似はしないだろう。