召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
「僕の探している本が、あっちにあるのかもしれなくても、ですか?」

 この青年……実は危ない人、なのかな? もしくはただ単に、図書館のバックヤードを見たい、とかいう利用者かもしれない。
 元いた世界でも、バックヤードツアーの企画は人気だったから。

 だけどこの奥にあるのは禁書区画。そのことを知っているのは、一部の人だから、そっちの可能性の方が大きかった。とはいえ、私の役目は青年を禁書区画から遠ざけること。なんとかして説得しなければ。

「……そうですね。もし仮にあったとしても、まだ書架に並べられない本は登録されていないため、貸出することはできません。閲覧もまた同じです」
「ほんの少しだけでも、ですか?」
「はい。利用者の方には、綺麗な状態でお見せしたい、というのが我々の気持ちですので。それにお探しの本は、どのようなものなのですか? こちらで調べることはできます」

 落ち着け、私。最近、占いばかり対応していたからか、前よりも利用者の対応ができている。このまま、レファレンスサービスに移行するのよ。

 けれど青年はすんなり答えるつもりはないらしい。まだ奥に行きたい、と青い瞳が物語っていた。

 だからといって、「はい、どうぞ」というわけにもいかないのよ!
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