召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
 とはいえ、やはりあの青年が気になった。なかなか退かないところを見ると、禁書区画だと分かった上であの場にいたような、そんな感じを受けたからだ。

 ラモーナには一応、怪しい青年として報告はしたものの、そんな連日、やって来るとは思えない。だから大丈夫だろう、と思っていたのに……視線の先、技術と工学の棚の前にいる、あの青年。後ろ姿だけど、昨日の青年によく似ていた。

 茶色の髪は勿論のこと。細身でスラッとした体形。決め手はやはり、ローブのような黒い上着だった。

 禁書は主に魔術書だと聞いていたため、なぜ青年が技術と工学の棚にいるのかが不思議でならない。
 技術と工学には魔術的要素はなく、自らの力のみで作り上げるもの。魔力の有無は関係なく、腕と発想と努力次第で、どこまでもどこまでも極められる代物なのだ。
 
 そんな風にジーっと見ていたからだろうか。突然、青年が振り返った。その瞬間、やはり昨日の青年だと確信する。と、そこまでは良かった。

 これから……どうする? バッチリ目が合ったんだけど! しかも、なんでこっちに来るのよ!?
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