召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
「まさかとは思うけど、禁書区画に向かったのかしら。って今はそんな心配をしている場合ではないわ。アゼリア!」

 私は急いで駆け寄り、横たわっているアゼリアを起こした。倒れた割には目立った怪我やすり傷、打撲などは確認できない。カードが大きく散らばっているのは、倒れた反動だと思ったけれど、どうやら違うような気がした。

「だけど、わざわざ横たわらせる意味が分からない」

 それも床にだ。ベッドなど、横たわらせる場所があるのなら分かるけど。

「アゼリアがほだされたように、向こうも情が移ったのかしら」

 そっちの方が納得できる答えだった。でもアゼリアが気を失っている以上、どんなに配慮をしようが許せるものではない。

 私は沸々と湧き上がる怒りを抑えながら、アゼリアの体を揺さぶった。こんな姿をグリフィスが見たら、私以上に怒るだろう。

 稀代の魔女、ウルリーケの弟なだけあって、グリフィスもまた魔力量が多く、優秀な魔術師なのだ。私みたいな低級魔術師が止められるレベルではない。

「だから早く起きてよ〜」

 けれどアゼリアは、いくら揺さぶってもビクともしない。

 つねるか。それとも頬を叩く? う〜ん。グリフィスが来るのよ。その跡がついていたら……怒るよね。でもアゼリアが起きるのなら、背に腹は代えられない!
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