召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
「えぃ!」
「何をしているんですか?」
怒気の孕んだ低い声と共に、振り上げた手が動かなくなった。まさか、と辺りを見渡しても、それらしい姿が見えない。すると、「こっちですよ」と声のする方へと視線を下げた。
「それ、こっちのセリフなんだけど。グリフィス、あんたどこに座っているのよ」
「問題ありません。ちゃんと洗流を使いましたから」
「そういう問題じゃないの! いくらウサギの姿をしているからといって、ちゃっかりアゼリアの上に乗るんじゃないわよ」
ちょこんとアゼリアの膝に乗っている姿は可愛いけれど、その中身がグリフィスだと思うと解せない。さらにシレっとした態度が気に食わなかった。
「無理なことを言わないでください。そもそも乗らないと、今のアゼリアの状態が分からないのですから」
「……どういうこと? ただ気を失っているだけではないの?」
「ヘルガ。あなたも魔術師ならば分かるでしょう。これは眠慰がかけられています」
「っ! なんで? アゼリアに保護魔術をかけたのはグリフィスでしょう? どうしてそんな初歩的なミスをしたのよ」
「していません。ただ……眠慰だけは、私も使用していたため、その魔術が通ることを気づかれたとしか……」
グリフィスがかけた保護魔術をすり抜けた眠慰は、相手を眠らせる魔術。アゼリアが不眠症になっていたとは思えないから、グリフィスが勝手にやったことなのだろう。そもそも、グリフィスがウサギ獣人なのも、魔術師であることも、アゼリアには秘密になっている。
口が滑らないように、念を押されたから間違いない。
「何をしているんですか?」
怒気の孕んだ低い声と共に、振り上げた手が動かなくなった。まさか、と辺りを見渡しても、それらしい姿が見えない。すると、「こっちですよ」と声のする方へと視線を下げた。
「それ、こっちのセリフなんだけど。グリフィス、あんたどこに座っているのよ」
「問題ありません。ちゃんと洗流を使いましたから」
「そういう問題じゃないの! いくらウサギの姿をしているからといって、ちゃっかりアゼリアの上に乗るんじゃないわよ」
ちょこんとアゼリアの膝に乗っている姿は可愛いけれど、その中身がグリフィスだと思うと解せない。さらにシレっとした態度が気に食わなかった。
「無理なことを言わないでください。そもそも乗らないと、今のアゼリアの状態が分からないのですから」
「……どういうこと? ただ気を失っているだけではないの?」
「ヘルガ。あなたも魔術師ならば分かるでしょう。これは眠慰がかけられています」
「っ! なんで? アゼリアに保護魔術をかけたのはグリフィスでしょう? どうしてそんな初歩的なミスをしたのよ」
「していません。ただ……眠慰だけは、私も使用していたため、その魔術が通ることを気づかれたとしか……」
グリフィスがかけた保護魔術をすり抜けた眠慰は、相手を眠らせる魔術。アゼリアが不眠症になっていたとは思えないから、グリフィスが勝手にやったことなのだろう。そもそも、グリフィスがウサギ獣人なのも、魔術師であることも、アゼリアには秘密になっている。
口が滑らないように、念を押されたから間違いない。