召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
当初、私はこのように外に働きに行くとは予想だにしなかった。あの黒いフードの男たちから狙われている身である以上、グリフィスの家でひたすら静かに暮らすものだと、てっきり思っていたからだ。
けれど私は、どうやらじっとしていられない性格のようで、グリフィスが出かけている間に掃除や食事の用意などをしていたら、案の定というべきか、彼の逆鱗に触れてしまったのだ。
そう、家事はグリフィスの領域。いや、聖域といっても過言ではない。そこに自分以外の誰かがやった、という痕跡すら残っているのが、許せない人物だったのだ。グリフィス・ハウエル、という人間は。
あんなに怒ったグリフィスを見たのは、後にも先にも、あれが初めてだった。
そこでグリフィスも考えたのだろう。外へ働きに出ないか、と提案してくれたのだ。勿論、私は二つ返事で答えた。そしてグリフィスの伝手で、ここの図書館で働くようになったのである。
「だって……司書として雇ってもらえたのに、ここのところ、ずっとできていないでしょう。早目に出勤して、ちゃんと仕事をしようと思ったの」
「……あぁ~、うん。アゼリアのその気持ちは分かるんだけどね。今日も無理だと思うよ」
「え? どうして?」
「ほら、あれ」
ヘルガの視線を追った先で見たのは、図書館の入口に並ぶ人々だった。早目に来たこともあり、開館時間まではあと一時間近くある。それなのに、行列ができているとは思わず、私は口元に手を当てた。
けれど私は、どうやらじっとしていられない性格のようで、グリフィスが出かけている間に掃除や食事の用意などをしていたら、案の定というべきか、彼の逆鱗に触れてしまったのだ。
そう、家事はグリフィスの領域。いや、聖域といっても過言ではない。そこに自分以外の誰かがやった、という痕跡すら残っているのが、許せない人物だったのだ。グリフィス・ハウエル、という人間は。
あんなに怒ったグリフィスを見たのは、後にも先にも、あれが初めてだった。
そこでグリフィスも考えたのだろう。外へ働きに出ないか、と提案してくれたのだ。勿論、私は二つ返事で答えた。そしてグリフィスの伝手で、ここの図書館で働くようになったのである。
「だって……司書として雇ってもらえたのに、ここのところ、ずっとできていないでしょう。早目に出勤して、ちゃんと仕事をしようと思ったの」
「……あぁ~、うん。アゼリアのその気持ちは分かるんだけどね。今日も無理だと思うよ」
「え? どうして?」
「ほら、あれ」
ヘルガの視線を追った先で見たのは、図書館の入口に並ぶ人々だった。早目に来たこともあり、開館時間まではあと一時間近くある。それなのに、行列ができているとは思わず、私は口元に手を当てた。