召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
 肝心の箱を見てみると、表面には人物から動物まで……タロットと書かれていなかったら、なんの箱なのか分からないくらい、美麗な絵が描かれていた。
 その横にあるオラクルカード、ルノルマンカードの箱もまた然り。

 ゆ、誘惑が凄い。知らないカードばかりなのもあるけれど、わぁ〜あのウサギのカード、可愛い〜! だけど猫も捨てがたい!
 でもここは……無難に人物の絵柄を選ぶ? いやいや、折角フェアに来たんだから、それこそ運命の出会いを求めて……えいっ!

 私は手を伸ばした先にあった、白いウサギが描かれたタロットカードの箱を持ち上げた。迷うのならば、一層のこと、直感に任せてみたのだ。
 予算的に買えるデッキは二つが限度。買うならタロットとは別の……と視線を横の書棚に向けた途端、猫のルノルマンカードの箱が目に入った。

「か、可愛い〜!」

 思わず声に出してしまうくらいの一目惚れだった。

 迷いがなくなった私は、すぐさまレジへと向かい、会計を済ませて書店を出た。
 家に着き、購入したばかりのデッキを開けた自分を想像するだけで、帰宅の足が軽やかになる。いつもは重い足取りなのに、こんなにも違うものかと思ってしまうほど。

「まぁ、それだけ楽しみなんだけどね」
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